こんにちは、せきゆおう です!
ある日、僕にロゴ制作のご依頼が入りました。
「せきゆおう=コーディング」というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、実はWeb制作全般に加え、グラフィックのご依頼もお受けしています。いわば、何でも屋のような存在です。
この記事では、ロゴ制作のためにクラウドソーシングでコンペを開催した過程や、その詳細をお伝えします。クラウドソーシングでのロゴ制作を検討している方や、コンペを主催したい方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
ロゴコンペを開催した経緯
久々にロゴ制作のご依頼をいただき、ワクワクしていました。11月初旬にご相談を受け、月内に完成させたいというご要望。しかし、予算は10万円以下で、しかも僕自身のスケジュールが年内ほぼ埋まっていたため、直接お引き受けするのは難しい状況でした。
そこで、クラウドソーシングを活用することをご提案しました。ただし、単に依頼するだけでは良いロゴに出会える可能性が低いと感じたため、僕自身が監修としてプロジェクトに参加することにしました。
僕の役目は以下の通りです。
・ヒアリング
・制作依頼のライティング
・コンペの代行開催
・ロゴのクオリティチェック
・ロゴの共同審査
・当選者やコンペ参加者とのやりとり
依頼主が「事業が続く限り愛せるようなクオリティの高いロゴ」を手に入れること!これが僕のミッションです。
ヒアリングと依頼文の作成
Zoomを使用して依頼主とヒアリングを行いました。デザインに関しては初心者で、「とりあえず、気に入ったものを選ぶ」という軽いノリでした。しかし、この段階から監修としての役割の重要性を強く感じました。
ヒアリング内容を元に、約2,000文字の依頼文を作成。依頼主の事業の背景や思い、ロゴに求める印象などを細かく言語化することで、コンペ参加者が依頼主のイメージに近い提案を出しやすくなりました。
もし依頼主が単独でコンペを開催していた場合、事業イメージと異なる提案が集まり、結果的に何度もやり直しが発生したり採用者無しになっていたかもしれません。
コンペの代行開催(続々と集まるロゴ案)
コンペでは予想以上に多くの提案をいただき、合計90件以上のロゴ案が集まりました。
参加者は経験20年以上のプロから、駆け出しのデザイナーまでさまざま。
クオリティチェックを行った結果、次のような内訳になりました。
・一次審査(僕のクオリティチェック)に合格したロゴ:15件
・ロゴとしての役割を果たしていない:全体の3割
・「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」系ロゴ:全体の5割
・制作依頼の詳細を読んでいないロゴ:全体の2割
一次審査通過ロゴの特徴
・シンボルマークのクオリティが高い
・シンボルマーク単体でも使いやすい
・シンボルマークが指定した形以外でも、デザインが依頼主の事業や想いを具体的に表現している(コンセプトがしっかりしている)
・ロゴタイプが独自性のあるフォントで構成されている
・「イラストっぽさ」がなく、シンボルマークとしての役割を果たしている
(それ、ロゴやなくてイラスト!という提案)
ただし、依頼主が「これがいい」と言えば、それも尊重する方針を取りました。とはいえ、90件以上の提案を精査するのは時間的にも負担が大きいため、一次審査は僕が一任されました。
ロゴの共同審査
依頼主は、クオリティの高いロゴが90件以上も集まったと喜んでいました。僕のヒアリングやコンペの開催や審査にとても満足していただきました。どんどん提案されるロゴが楽しみで、毎日見ていたようで、全てのロゴに目を通していたようです。
依頼主も一次審査の中からの選択で問題がないとのことでした。
一次審査を通過したロゴ案に対して、依頼主とZoomで共同審査を行いました。
僕の視点からロゴの使い勝手やデザイン意図を解説しながら、一緒に選定を進めた結果、最終的に3点のロゴ案が二次審査を通過。僕が「おそらく最後まで残るだろう」と感じていた2案がその中に含まれていました。
二次審査を通過したロゴの特徴
さて、コンペに参加する方にとって、どのようなロゴが残ったか気になるかと思うので、共通点をお伝えします。
・シンボルマークのクオリティが高い
・デザイナーが事業の背景や依頼主の想いを的確に表現している
以上です!
とてもシンプルな結果ですが、単純にクオリティが足りていないロゴは、どういった視点から相応しくないかを具体的に解説しました。やはり監修をすることである程度のクオリティを担保できたと思います。
しかし、最後まで依頼主を悩ませたのはコンセプトです。
僕は依頼文の中で、事業内容、ターゲット、事業地域、依頼主の想いや特徴など、事細かに書きました。モチーフとしたいものはあったので、それもお伝えしています。
最後まで残った3案は、デザイナーがモチーフ以外の想いや願いをロゴに込めてくれました。提案の全体の9割からは、正直...僕は「モチーフしか見ていないんだろうな」という感想になりました。
コンペは我々だけが開催しているわけではないので、デザイナーにとって1点集中は非常に効率が悪いと思います。なので、仕方のないことだと思いますが、コンペに参加される方は、徹底的に一点集中を狙ってもよいのではないでしょうか?
そのように作られた「想いが形になっているロゴ」は、依頼主の心を動かし感動していました。その3案はどれも素晴らしく、どのロゴを採用するか、非常に悩んでいました。
ロゴコンペで避けてほしいポイント!
僕も90点以上のロゴを確認するのに、とても大変でした。
多くの提案を確認する中で、「これは逆効果だな」と感じたポイントを以下にまとめました。
1.モックアップやテクスチャに頼りすぎ
ロゴの魅力を引き立てるために、背景加工を活用することは有効です。しかし、シンプルに白地や黒地に配置したものも併せて提出してほしいです。テクスチャの上に加工されたロゴだけだと、ロゴそのものの良さが判断しづらくなります。
モックアップを使った提案やテクスチャを含めたロゴは、あくまで補足としてください。
(例えばこのような合成のみの提案だと厳しい!)
2.サムネイルに表示される画像が細かすぎる
サムネイル画像が細かすぎると、一覧表示でロゴの良さが伝わりません。ロゴは白地に大きく見やすく配置する方が目を引きやすいです。
サムネイルに表示される画像が、「モックアップにはめられたもの」「テクスチャで加工されたもの」「複数パターンを載せているもの」が非常に多かったです。
コンペの一覧画面には多くのロゴが並びます。サムネイルのサイズが小さいのに、さらにその小さい画像の中で複数パターンを作られたり、小さく掲載されると、ロゴがよく分かりません。
サムネイルに使う画像は、白地になるべく大きくロゴを載せていただけるとありがたいです。また、多くの方がテクスチャで加工したり、小さく表記したり、複数表記しているので、シンプルな方が逆に目立つと思いますよ。
↑これは実際の提案画面のスクリーンショットを加工したものです。モノクロのロゴでもここまで細かく見えます。
3.塩対応
せっかく良いデザイン・良いコンセプトなのに、クライアントワークが弱い方は勿体ないなと感じました。ロゴは事業が続く限り使うものです。やはり、良いデザイナーさんが制作したものを気持ちよく使いたいじゃないですか。なんかイラッとするデザイナーさんに作ってもらったら、本気でそのロゴを愛せないと思うんです。
4.造形だけを整えたシンボルマーク
モチーフをそのまま形にするだけのロゴでは、「なんだか好きになれない」という感想になりがちです。デザインは「造形」と「思考」の掛け合わせで初めて価値を持つものだと改めて実感しました。
「モチーフをそのまま形にする」の何がダメなの?という感じる方も多いかと思いますが、前田さんの言葉を借りると、デザインとは「思考」と「造形」による設計なのです。
デザインとは「思考」と「造形」による設計なのです。
日本語のデザインは「style」だけを指すがことが多いので、どうしても造形の質に目がいきがちの人が多いことです。特にデザイナーでない人からしてみると、思考の質は目に見えづらいので、理解しづらかったりするのですが、思考の質と造形の質、どちらもないとダメなんですね。
デザインの磨き方 - 造形の質編|前田高志
しかし、一次審査を通過したほとんどのロゴ案は、モチーフ以上の「コンセプト」がありました。モチーフ以外の想いや願いをデザインに込めることで、思考の質が高い提案となっていました。そうした提案は、単なるビジュアルではなく、依頼主の心に響くロゴになっていたと感じます。
コンペ形式では、多くのデザイナーが「手数を増やして当たりを狙う」スタイルを取ることも仕方ないかもしれません。しかし、依頼主の事業や未来を真剣に考えたロゴ案は、他と一線を画す力を持っています。
↑正直、こんな感じのご提案が多かったです。
どのような提案が良いかまとめます!
・サムネイル画像はロゴ1つのみを大きく使い加工は無し!
・白背景、黒背景、モノクロでの使用例を掲載。
・テクスチャや合成は参考になるので有効だが使いすぎ注意
・モチーフをそのまま形にするだけのロゴは弱い!
・依頼主が愛せるコンセプトがすごく重要!
さいごに
コンペ形式であっても、デザイナーが依頼主の想いや事業背景を深く理解し、それを形にすることが重要であると改めて実感しました。事業に根ざした「コンセプト」を持つロゴは、依頼主自身がその魅力や想いを他者に語ることができます。コンセプトを人に語りたくなるロゴは、自然と愛着が湧き、長く愛され続ける存在になるのだと思います。
この記事が、ロゴコンペを検討している方や、参加されるデザイナーの参考になれば幸いです。